ザンビアに来て早4ヶ月、中間地点を折り返し、調査も終盤をむかえています。近隣校を巡回し、授業研究を観察していますが、予想していた以上に刺激的な日々を送っています。
今回は、その調査の中で、ザンビア数学の困難な状況を思い知らされた出来事を紹介したいと思います。
まずは、下の写真を見て下さい。
この授業のトピックは、帯分数の引き算でした(7年生)。板書の内容を見て、すぐに気づかれると思いますが、計算過程がめちゃくちゃなことになっています。分子の変え方もおかしいですが、引き算の仕方もあり得ません。答えが8になっていて、明らかに間違いと分かります。これは、生徒が書いた訳ではなく、教師(9年目のベテラン)が例題として取り上げ、解法を説明しながら板書したものです。そして、当然生徒もそれを覚えて、次のように計算してしまいます。
教師は、授業の最後まで間違えに気づかず、誤った解法を教えたままで授業は終わってしまいました(自分は、この間違いを授業中に指摘するのは、その教師の立場やプライドもあるのでやめました)。
ただ、更に驚くべきことは、授業を観察していた教師の5人中4人が全くこの間違いに気づいていなかったということです。授業反省会では、しばらくこの間違いが指摘されることがなく、授業者の教師の指導が絶賛されていました。
自分は誰かが指摘してくれるはずだと、ぐっと我慢して、その時を待ちました。反省会も中ごろになって、ようやく間違いに気づいていた教師の一人が切り出しました。最初の内は、誰もがその教師の指摘を理解できませんでした。そして、授業者は、自分の使ったメソッドは正しいと一歩も引かない状況がしばらく続きました。
ここで、ようやく自分の出番です。授業者が、授業の最初から最後まで間違った解法を生徒に教えてしまっていたことを正しい解法を見せながら丁寧に説明しました。それでも、そんなはずはないと、授業者は食い下がりましたが、説明を繰り返す内に納得し、落胆した表情を見せていました。他の教師も事の重大さにようやく気づき、一斉に驚いていました。
7年生の教師は確かに数学専科の教師ではないのですが、それにしてもひどすぎました。授業の教え方がどうこうという以前の問題です。しかしながら、授業研究を行い、他の教師がこの間違いを指摘出来たということは、ある意味で授業研究が導入された成果と捉えることもできます。ここでもし、この一件がなければ、この授業者や教師たちは今後も同じ間違いを繰り返した可能性が高いと思います。
以上が、ザンビア数学の授業における一コマです。非常に困難な状況であることが分かっていただけたかと思います。
(これは自分が観察した最もひどいケースで、中には非常に良い授業をしている学校もありますので、全てがこういう状態だと誤解しないようにお願いします)
2010年7月12日月曜日
ザンビア授業研究の一コマ
時刻: 月曜日, 7月 12, 2010
ラベル: ZAMBIAについて, 石井 洋
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿