私(馬場)にとって記念すべき第一回は、ザンビア・プログラム(正式名称IDEC-JICA連携事業)について書きたいと思います。
この青年海外協力隊と大学院の双方を一気に行ってしまうという画期的なプログラムは2002年に始まりました。私自身は、立ち上げが終わってそれが軌道に乗り始めたころから、院生の指導の点より関わり始めました。このプログラムの潜在性については非常に大きな期待をしています。
話は飛ぶのですが、私自身が青年海外協力隊隊員としてフィリピンに派遣されたのは四半世紀ほど前の1984年のことです。当時は未だマルコス氏が大統領だった頃で、熱く蒸せるあの頃のマニラの空気が懐かしく思い出されます。ご存知の方も多いと思いますが、その後Peoples’ powerと呼ばれる無血革命が起こり、結局マルコス氏が追い出されて、アキノ氏が大統領に就任しました。その前後の変化は、体感したものにしか分からない気がします。
さて話を元に戻すと、この連携プログラムは、今年度、これまでの取り組みの集大成として二つの新しい取り組みを行いました。一つは、「ザンビアの教育」という冊子の出版です。その冊子には、学生たちがこれまで収集、分析してきた情報が、文章としてまとめられています。それだけのこととも言えますが、それが生み出した情報は、協力隊活動の新たな地平を生み出すことになったと思います。今一つは、ザンビア大学との共同ワークショップです。ザンビア大学の教員や院生100名ほどを前にした堂々たる発表は、自分の指導学生ながらまばゆいものを感じました。これらの取り組みには、まさにこのプログラムが最初に構想した「実践と理論の融合」の第一歩と言えるでしょう。
国際協力は、異文化の中で育ってきた者同士が出会うことから始まります。その出会いと協力の底流には、共感が必要であると思います。この共感には、頭だけではなく上述のような経験そして体感することが重要な鍵を握ります。単に自分のしてきたことを熱く語るのみならず、単に教科書で読んだことを知ったかぶりに語るでもなく、異なる背景を持つ相手の考えに共感しながら、開発問題、もう少し大きく言えば、私たちの社会の抱える地球規模の課題を冷静に見つめることです。これはJICAの言う現場主義を踏まえて、さらにそこから歩を進めようとする超・現場主義といえると思います。
今回の取り組みは、そのような超・現場主義の一つの例と捉えることもできるのではないかと考えます。ようやく次の目標が見えてきた気がします。この感覚は坂道を上りつめて、その先が見えるようになってきた感覚に似ています。
さて、まだまだ続くこの実験。一体、次は何が起きるのか、楽しみです。
馬場 卓也
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